君がやり遂げたことは、どんなに小さなことでも誇っていい。
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でも僕にとってのSF作家クラブは、SFを語り合ったり、バカ話のできる場であり、楽しくて仕方なかった。特に星さんの存在は大きくて、世の中にこんなにおかしな人がいるのかと思ったくらいだ。六十四年十月に東海道新幹線が開通するまで、大阪から東京に出てくるには夜行で十三時間かかった。それでもSF作家クラブの集まりに顔を出したのは、星さんに会いたかったからだと言ってもいい。
有名なエピソードは東海村の日本原子力研究所に視察に言った時の話。係の人が出てきて、「何からお見せしましょうか」と言うと、星さんが「まず原子というものを見せてください。この目で見ないと信用できない」。みんなで大受けして、そのうち原子は海で採れるのか山で採れるのかと大真面目に議論し始めた。しまいには星さんが「所長の原子力(はらこつとむ)さんに会わせてくれ」なんて言う始末。あの頃のSF作家クラブの集まりはこんなのばっかりだった。
星さんは普段から同じような調子だった。進化の話の最中に人類はいつ立ったのかという話になったら、「人類は朝立った」。じゃあ女はどうなるんだ。夜中の二時くらいに電話をかけてきて、「いやあ、セックスのやり方忘れちゃった。教えてください」なんてこともあった。
こちらは大笑いした挙げ句、調子が狂って原稿どころじゃなくなる。尼崎に住んでいた時には、葉書に「尻崎」と書いてくる。「『尻』じゃなくて『尼』ですよ。中が九じゃなくて七」と言うと、「多い方がいいじゃないか」。で、次に来た葉書を見ると「屁崎」になっている。「忘れないように二つ書いた」って。
SF作家クラブが果たして福島さんの狙いどおりだったかわからないけれども、星さんの不思議な存在感が、初期のSF界の雰囲気を作っていったような気がする。
「SF魂」小松左京 新潮新書 2006